サラブレッド血統の科学

走能力の遺伝(3)量的形質

(3)「量的形質」

量的形質は、複数の遺伝子が係わっているため
環境の影響で、その形質の表れ方が変化します。

例えば

体重(複数の遺伝子に支配されている形質)が
その時の栄養状態によって変化することを考えれば理解できます。

すなわち、ある時点での表現型(体重)は
良きにつけ悪しきにつけ
その時点の遺伝と環境の和として表れます。

この量的形質の遺伝する強さは
優性・劣性ではなく
遺伝率(ヘリタビリティ)という値で表します。

(1)はじめに

(2)「走能力の遺伝には複数の遺伝子が関わる」

走能力の遺伝(2)複数の遺伝子

(2)「走能力の遺伝には複数の遺伝子が関わる」

親から子に伝わる形質には
1つの遺伝子で決まるものと

複数の遺伝子できまるものとがあります。

1つの遺伝子で決まるものには
血液型や馬の毛色などがあり

これらは一生変わることがなく
その遺伝の仕方は

優性(顕性:ケンセイ)・劣性(潜性:センセイ)の考え方で知られています。

一方複数の遺伝子の影響をうけるものは
量的形質ともいわれ

量的に数字で表すことができるものが多く
サラブレッドの走能力や体格(体重、体高など)や

家畜の乳量・肉質などがあります。

 

(1)はじめに

サラブレッドの走能力の遺伝(1)

(1)はじめに

サラブレッドの走能力がどのように親から仔に伝わる(遺伝する)のかについて

育種(統計遺伝)の考え方を数回に分けて紹介します。

(2)「走能力の遺伝には複数の遺伝子が関わる」

(3)「量的形質」

(4)「サラブレッドの遺伝と環境」

(5)「走能力の遺伝の考え方」

(6)「サラブレッドの能力は何で表す?」

(7)「競馬サイエンスでは指標に何を使っているか?」

(8)「芝とダートの違い」

 

春の天皇賞:競馬の短距離・長距離

春の天皇賞は
平地競走では3番目に長い距離3,200メートルのレースです

人の陸上競技では、100mからマラソンの42.195kmまでありますが
JRA芝の平地競走では、最短距離は1,000m、最長距離は3,600mです

人のように極端に距離が違うと、短距離か長距離か明白に判別できますが
競馬の3,200メートルは、どちらなのでしょうか?

その答えを得るためのひとつの方法として
「走速度と走行時間」の関係からみることができます

人では、2分33秒のところに走速度と走行時間の関係が変化する所(変曲点)があり
無酸素運動(短距離走)と有酸素運動(長距離走)との境目とみられています

競馬も同様に走速度と走行時間の関係から見てみると
変曲点は、人と同じ2分35秒(競馬では約2,500mに該当)のところに確認でき
競走馬にとっても、この2,500mが短距離と長距離の境のようです

日本で行われている競馬の98%は2,500m以下であることから
日本の競馬のほとんどは
人の陸上競技における短距離から中距離に相当していると考えられます

サラブレッドの能力は何で表す?

サラブレッドの走能力を表す時に、重要なことは
走能力の指標を何にするかということです。

日本で取得できる走能力の指標としては
タイム
着順
着差
収得賞金(アーニング)
アーニング・インデックス
フリーハンデ
レーティング
などがあります。

外国では
パフォーマンス・レイト
タイムフォーム・レイト
などがあります。

Parlodel

サラブレッドの遺伝と環境

サラブレッドが両親から受け継いだ走能力を十分発揮するためには、
日常の調教や飼養管理などの環境を良くすることが重要である。

遺伝的に優秀な走能力をいくら受け継いだとしても
環境が劣悪になれば、宝の持ち腐れとなる。

馬券の検討材料として把握できることは限定されるが
調教や飼養管理の状態は、
追い切りタイムや馬体重の変化でとらえられので、
競馬予想の情報だけでなく、
これらの情報もチェックをする必要がある。

飼養管理については把握できない部分も多いが、
馬体重の増減を利用することも一つの方法である。

参考に
「競馬用語」の馬体重
「博士のブログ」の走能力と馬体重も見てください